細部までこだわって開発した「美姉妹石鹸」・「美肌男石鹸」。
その製造には、機械製の安価な大量生産の石鹸が市場を席巻する中、ひたすらに手作り・釜炊きに、60年もの間こだわり続けている石鹸職人「桶谷 正廣」さんのお力をお借りしています。
今回は、直接工場までお伺いし、石鹸作りに対する想いを聞きました。

桶谷 正廣(62歳)
(インタビュアー 沼尾浩子)
-桶谷石鹸は創業60年を迎えられたそうですね。
(桶谷正廣さん)
そうです。昭和26年に「桶谷石鹸製造所」を私の父が立ち上げました。
そして、昭和33年には株式会社になりました。
-創業の時、桶谷さんはおいくつだったんですか?
2つ。
その頃のことは覚えていないけれど、幼稚園のころくらいからかな、親父の背中を覚えています。今は両親とも死んでしまったけれど、2人共毎日石鹸のことをやっていましたね。
-いつ頃、家業を継ごうと思われたんですか?
半強制的と言ったらおかしいけど、10歳上の兄貴がいて、普通昔だったら自動的に兄貴がいたら(お兄さんが継ぐので)次男は養子に行ってもいいと言われていたんですが、それがたまたま兄貴が死んでしまった。
それまで12年間“勉強しなくても何してもいい”と自由だった親父が極端に変わってしまって、親戚も“お前が継ぐんだ”と押し込められ、中学1年からずっとアルバイト。

-学校終わってからずっとですか?
もちろん手伝ったし、夏休みとか、冬休みとかもね
-厳しかったんですか?
あ~厳しかったですよ。桶谷石鹸に22歳で入社という形でぺーぺーでしょう?
桶谷家を出たら、(親子でなく)社長とただのイチ従業員ですから、そういうけじめはものすごく厳しかった。恐ろしいぐらいに。

60年の重みを感じる工場
-どんなところが一番厳しかったですか?
油脂をこぼしたら怒られる。
今は、ボタン押したら電気ポンプで仕込むから一滴もこぼれないけれど、自分たちの頃は、一斗缶を転がしてきて、穴を手で開けて入れてた。
その時、下手したらやっぱり(穴を開ける位置が)はずれるときがあって溢れてしまう。そんな時は一斗缶に手を擦り付けるみたいにする。
そのくらい、油を大事にしろってわけです。
そんな時は手が切れててもわっからないですよ。年々麻痺してしまって。油も冷たいしね。
でもそれだけ油って物を大事にしなければ。油脂ってものがあるから石鹸が作れるから。
石鹸が先じゃなくって原料が先ってこと。
その原料を大事にしなかったらいい釜炊きさんにはなれないってこと。
-だから今の桶谷石鹸、桶谷ブランドがあるんですね。
そうだね。やっぱりその時の厳しさってものが身に残ってるっていうか。
まあ、“大学出たからお前は一生大丈夫”とかじゃなくて、一からの修行というか。
小さい頃、そこまで怒られるってことはなかったからね。
-私が桶谷さんの言葉で一番好きなのが“石鹸は生きてる”って言葉なんですが、釜炊き、手作りと関係してますか?
そうだね。
全部自然のものでしょう?油脂っていうのはね。そういう自然のものを、いかに人間が一番いいところを引き出して、合体することによって汚れを落とすか。
機械ではちょっと後で何か添加すればできるかもしれないけど、自然の中でつっぱり感のないようにしようと思ったらやはり釜炊き製法かやな。
素材というものを、油脂を、どうしたらこの子らの一番いいところが、石鹸という形になったときに発揮できる。一番大事なのは熱。熱がなければ僕はいい石鹸はできないいと思う。そのためにはやはりついていないと。
人間でみんな体温も性格も違う。お風呂入るのと一緒。45度じゃないと嫌だ、44度がいい。ぬくいのが好き。石鹸も素材に合わせて苛性ソーダを入れるタイミングを考えなきゃいけない。
-美姉妹・美肌男石鹸はアルガンオイルが特徴ですが、配合するタイミングがあるのですか?
石鹸素地ができあがったら温かいうちにアルガンオイルを入れると弱アルカリになってアルガンオイルの特徴が出る。冷めてからだとそのまま点になって残ってしまうだけ。熱というか温度が大事なんや。
-季節によっての違いはありますか?
それはあるよ。夏は釜も熱いし冷めない。冬は一日たったら冷た~くなってる。自分の手も冷たい。だから釜の中に手を入れても無茶苦茶熱いのを感じない時もある。だから、タイミングを見ながらこのくらいかな、と冬場が一番難しいな。
-温度は指で測るのですか?
そうよ。温度計だったらひゅ~っと上がって今だ!って思ったタイミングじゃ遅いんや。コンピューターもいちいち設定し直さなきゃならない。
プラスアルファ自分の気持ちをどこまで持っていけるか。喜怒哀楽あるじゃない?人間も。 油脂にもあるのよ。

-油脂にも喜怒哀楽があるんですか!?
そう。
あともうひとつうちの親父さんが言ったのは“石鹸炊く時話をしろ”“対話をしろ”って。そうしたら相手の気持ちがわかる。
そんなの分かれて言ったって分かるはずない。話しかけたってかえってくるわけじゃないし。(言葉で言うのは)めちゃめちゃ簡単だけど。
でも、親父が亡くなって、釜を焚かしてもらっていたらだんだんわかるようになってきた。
一人でやっぱり呟いてるもん。心の中で、“あ、今日は機嫌よさそうだな”って感じで。
状態見てね、“おー、今日は良くタイミングあったな、お互いに”とかね。
“なんで、今日お前あかんの!?今日は夕方忙しいのに!”とか。
その子にどうしてやったら良いか。幼稚園くらいの子をしつけるみたいなもんだな。
怒るときは怒って、可愛がるときは可愛がってあげる。そんな感じ。
人間同士だからしゃべるんであって、石鹸の場合はしゃべらないんだよね相手が。
相手がしゃべらないから犬と一緒です。
-ペットをしつけるのと一緒?
そうそう。
この子は今俺に何を言いたいんだろうなって。おしっこしたいのになんで連れってってくれないのとか、水欲しいのになんでくれないのとか、やっぱり仕草しますでしょう。
それと一緒です。
僕らが職人だから、石鹸作るのが当たり前じゃなくて、僕らは介添え人みたいなもん。
温度調節してあげて、あとは自分の力で。
どんなに人間が一所懸命やっても自然の力よ。
コンピューターじゃなくて自然の時は相手まかせ。自分任せにしたら失敗する。
人間は気が早く違うこと考えるから。この子は石鹸のことしか考えないから
だから、温度が高かったら“ゴメンな”って言って下げて。
温度が下がったらいっぺんにくっついて石鹸になってくれる。
だから介添え人みたいなもんです。主導権は握っていても自分ではないわけ。
ただ段取りをしてあげてるだけ。
-あくまでも、石鹸が1番良い状態になるように手伝ってあげてるだけ?
親方みたいなもんかな。まあ最後の勝負かけるときはこっちだからね。
上から押さえるっていったらおかしいけど、“このままじゃお前は石鹸にならないから、ここからは俺が石鹸にしてやるから待ってろよ”って。
でそこでぱっと水を入れるんだよ。
そのタイミングもまた難しいんやけどね。
毎日焚いて年中状態が違うわけ。
だからいろんなことを見てこなければできない。それも1、2年じゃ無理。

お話を聞くときの優しい笑顔と、仕事をされている時の厳しい表情のギャップが印象的だ
耳で聞き、目で見て、肌で感じて、石鹸ができあがっていく
-以前桶谷さんは「この石鹸は手間がかかる」と言っていましたがそれはどういう意味ですか?
当たり前のことかもしれないけれど、たとえば、石鹸を炊きました、熟成しました、枠に流し込みました、という順番があります。
それは手がかかる。でも、その工程を踏まなければだれにでも合うような石鹸はできない。
-んー、機械?
間違い!
みなさん間違う。機械の方が硬いでしょう?水分がないし。
うちのは柔らかいんですよ。
使いやすいけれど、すぐに無くなるような気がするんですよ。けど、ホントは違う。
ぜんぜん違うって言ってもいいくらいにね。
なんでかというと、機械の方ははじめから水分が少ないわけ。
だから、機械で作って、押し出して次から次へと型にされて、整形されて出てくる。
上から落とすとコーンと音がする。全部硬い。中までいっても硬い。
一回使って置いておくでしょう?上から水分が入ってくるでしょう?
中の中まで入ってくるわけ。
石鹸というか、アルカリは水分がめちゃめちゃ好きだから。
なんぼでも入ってくる。
だから、使ってる間にズルズルになっていく。溶け崩れていく。
溶け崩れが早いのが、機械練り製。
“なんで桶谷さんのはそれが少ないんですか?”というと、
もともと水分を持ってるでしょう?
そこへお湯が入ってくる。
飛んだ分はもらいます。そうでない分は全部蒸発していくわけ。
お酒飲んだって、一升は入るけど、一升一合は入らないでしょう?
それと同じ理屈。入らない分は全部蒸発していくわけ。
だから、自分から溶け崩れていくことはない。

桶谷石鹸での石鹸製造は
ひとつひとつ、すべてが手作業だ
<枠練り製法の工程>
![]() 鹸化 |
![]() 塩析 |
![]() 流込 |
![]() 攪拌 |
![]() 枠抜 |
![]() 切断 |
![]() 乾燥 |
![]() 型打 |
![]() 包装 |
-じゃぁ、お風呂場にそのまま置いておいても大丈夫なんですか?
そうなんです。
それと枠練り製法というのは、たとえば、一週間使い忘れて放っておくでしょう?
そうすると、今度はひび割れするんです。
密度がありすぎて、地割れみたいのがしやすいわけ。
乾燥してしまうから。
-じゃぁ、毎日使っているのが一番いい?
毎日一回だけでもね、お湯かけて顔洗っておいておくだけでね。
表面積が少なくなってきたら、今度は石鹸の働きができなくなる。
そこで捨てないで、新しい石鹸を買って、古いやつを(新しい石鹸に)くっつけてあげる。
で表側から使うわけ、でしばらくしたら裏側から使うわけ。
-最後の最後まで使うんですね。
ちょっと泡立ちが悪くなってきたなと思ったら、その子は置いといて、新しいやつとくっつけてあげる。
その子を最後の最後まで。
-美姉妹石鹸をお使いの方、みなさんリピーターで。
すごく良いものがわかってらっしゃるんですよね。
石鹸もそうだし、人間もそうかも知れないけれど、嫌なものが入ってくると拒絶反応起こすでしょ、勝手に皮膚が。あぁ、これはいいなと思うと、すっと入ってきたような気がするでしょ?あれは一緒ですよ。石鹸もやっぱそうなんです。
赤ちゃんからおじいちゃんまで誰でも使える石鹸を作っているからね。
石鹸を愛してくれる人を大事にしたいね。

釜を見つめる目は
まるでわが子の成長を見ているかのようだ
インタビュー全編はこちらから
桶谷石鹸株式会社
http://www.oketanisoap.co.jp
創業以来60年、天然素材と手作りにこだわり、伝統の釜炊き製法を守って、手作り石鹸を作り続ける。 安心と安全を第一に考え、すべての製品が無添加・無着色・無鉱物油・無合成界面活性剤の正真正銘の国産純正石鹸だ。







































































